【ケガ離脱中の心構え具体策】

ミニバスケでも中学のバスケでも、ボディコンタクトを恐れていると、いつまでも「心」も「体」も強くなれません。
 
ルーズボールに飛び込む。
腰を落としてガッチリとポジションを獲る。
相手がどんなに勢いよくドライブしてきても逃げずに体の芯で捕らえる。
 
「体」は対戦相手とぶつかりますが、それを通じて「挫けそうになる自分」「負けそうになる自分」…つまり「心」とぶつかり、それを鍛えることがバスケの本質だったりします。
 
そのため、接触プレーが不可欠なバスケットボールでは、少々の打撲や突き指などは絶えません。
しかし…、時にはどれだけ気をつけていても、不慮の事故などにより、チームから長期離脱しなければならないほどの大ケガという事態もあり得ます。
 
 
全治何週間という大ケガ…。
 
 
これって、ケガの箇所も痛いだけでなく、長期離脱を余儀なくされる子供本人は、バスケが好きであればあるほど、精神的に参りますよね…。
毎日の練習の中で、自分だけが見学している状況って…子供にとってはつまらないことかもしれないし、その療養期間中に、周りの上達を目の当たりにすると、「焦り」なども出てくることもあるでしょう。
 
でも、ケガをした現実は受け入れないといけない。
そして、チームメイトの上達は、チームとしての大きな目標を考えるならば、全体底上げとして好ましいことです。
子供心ながら、嫉妬心から来る「焦り」はあっても、チームとして考えるなら、自分も復帰後にしっかりと成長すれば良いだけのこと。
 
そうした中、子供は案外、ケガの翌日の練習から、「治るまで見学しておきなさい」という言葉によって、「しばらく練習ができない」「しばらく試合に出られない」という「事実」だけは、すぐに受け入れます。
 
そこで!
 
その「事実」を受け止めた直後の意識と行動が、大きなポイントとなります。
 
「コートの外から学べることはある」とは、慰めのように声掛けされることはあっても、それでは「どのように学ぶべきか」「どのような意識で行動すべきか」という「具体策」を述べてくれるオトナが案外少ないようです。
試練を乗り越えるにはもちろん「忍耐」と「根性」も必要でしょうが、「根性論」と「具体策」はまた別物…。
 
つまり…
 
「見学していなさい」とだけ言われ、「ただコートの横にいるだけ」の子と、「コートの横にいるのに、本人の意識はコートの中にいる」という子では、ケガ復帰した時にプレーに大きな差が出るようです。…それは「ただ耐えている子」と、「乗り越えようとする子」の違いとも言えるかもしれません。
 
この団長語録では、「ケガ療養中(=試練)の乗り越え方」について、「自分へのテーマ」と「見学時の意識」のこと、これら二つの事例を挙げてみることにします。
これは、我が娘がミニバスケ時代、練習中の不慮の事故により、右手首骨折した時の経験談であるため、いつも言うように、どの子にも当てはまるものではないかもしれません。
あくまでも参考の一つ程度で気軽にお読みいただければ幸いです。

 <自分へのテーマ>
 
右手ワンハンドシュートを会得した当時小6だった娘にとって、練習中、不意にコートサイドから転がってきたボールに巻き込まれて転倒し、右手首骨折という現実は、あまりにも厳しいものでした。
レントゲン結果を外科医に聞いた瞬間、全国行きを賭けた大会2週間前だっただけに、嗚咽号泣して泣き崩れた姿は、何年も経った今でも生々しく覚えています。。
しかし、涙枯れるほど泣いたせいからか、親の心配をよそに、メンタル的にはスグに立ち直りました。
 
本人は、「みんなと一緒に全国には行く道は閉ざされたけれど、卒業前の大阪市長杯は、絶対チームを優勝に導く!」と心に決め、全治40日の間、どのような意識を持つかを娘と話し合いました。(実際、ホントに弱小チームだった娘たちが、その1か月後…大阪市内72チームの頂点に立つミラクルを見せてくれました。)
 
「1ヵ月後に、元の状態になれる。」と耐えるのも決して悪くありません。
 
しかし、娘の場合は「1ヶ月後には、もしケガしていなかった場合の1ヶ月後のレベルに達していたい!」というビジョンを持ちました…つまり、「耐える」だけではなく「乗り越える」という志向性です。
いや、母親の心配はよそに、娘の信念と情熱に気がついた僕が、娘との話し合いで、以下の方法を見い出し、その志向性に辿り着いた感じというのが、正直なところです(笑。
 
もちろん、現実には「ブランクがあるのに、ケガしていなかった場合の1ヶ月後のレベルとなれる」…なんて確信は…正直全く無い…。だけど、その「意識・覚悟」があるのとないのとでは、復帰後の動きは明らかに「違うであろうという信念」の方が核心です。
 
「右手手首はギプスで固定されているが、左手と両足の自由は効く。」
 
この事実を、どう受け入れて、具体的にどのように乗り越えるか…
以下二つの解析をしました(図解できれば一番判り安いかもしれませんが…)
 
まず、骨折前の娘の全身レベルを100と見なします。
右手レベルは1ヶ月も使っていないと全治直後のレベルは70程度に落ちているかもしれない。
 
では、今のうちに、左手レベルは骨折前の100よりも、40日後には130にまで上げておこう。
そして、ココで大事なのは…
右手が回復したら、右手も必ず130までレベルをスグに上げようということです。
つまり、右手が回復した時、左手レベルが現状維持の100レベルのままでは、この1ヶ月間、何も成長していないことになる。
逆に、左手レベルが130まで上がり、今度は右手レベルも130レベルにまで上がれば、ケガのブランクがあったにも関わらず、娘のレベルは130が基準値になる。
(ここでいう130というのは、30%も上達するという意味ではなく、あくまでも子供に判りやすいような表現として使っています。)
 
それは、OF能力とDF能力に置き換えても、同じことが言えます。
右手が使えないから、オフェンス練習には参加できない。
しかし、フットワークを中心に、ディフェンス練習には参加できる。
…となると、ケガ直前のDF能力レベルを100とすれば、ケガ復帰後130レベルになるように、しっかりとした足は作れる。
ケガのブランクにより、OF能力が70に落ちたとしても、復帰後は、DFレベル130に追いつけるように、OF能力を上げることができれば、成長できることになる。
 
そんな「イメージと信念」が、まず子供の意識の中で理解できると、「今の状態でできることから」の練習にも熱が入ります。
 
ここでは、どのような練習をしたかまで述べると、長くなりますので端折りますが、実際、約40日間の治療と別メニュー中に、娘は確実に成長しました。
左のドライブレイアップ、局面によっては左手のワンハンドシュートまでできるようになっており、これはミニバス卒業後の上のバスケでも時々通用しています。
右からも左からも攻められるというのは、身体能力の低さをカバーする彼女の武器になりました。
また、ディフェンスは手でははく、足で相手を止めるのが「大好き」になりました。
(結局、府大会では、敗戦濃厚な最終Qだけ監督直訴して、左手一本で何度も相手を止め、14点差を1点差まで追い詰めることに貢献…その気迫…もう脱帽でした。)
 
 
 
<練習や試合の見学方法>
 
ケガをしてコート内に入れない子は、「集中して見ていなさい」とだけ言われるケースが多いようです。
ところが…子供は案外「どのように集中」すればよいのか…「何に集中」すればよいのかが解からなかったりします…。
 
これには、いろんな方法があるとは思います。
・監督やコーチの指導や話す内容について「本質を読み取る」訓練をする。
・時間配分や点差の駆け引きで負けないバスケを学ぶ。
 
これら全て…「見る」ことで学ぶことができたり、気付いたりする部分もあったり…
その姿勢を続けることで、集中力も養えるというメリットはあるでしょう…
 
しかし…この集中力というのは、子供には案外難しかったりします…。
言葉の本質を読み取る力や、バスケそのものをまだ解かっていない子には、見学の集中力の維持や、見続けることにより集中力が養えるようになるというのは、そうとう高度なレベルが求められる気がします。
 
それならば、どうすれば良いでしょうか…。
 
まだ試合などで貢献ができていない子の場合なら、「プレーも振る舞いも、憧れのプレイヤーを、ずっと目で追いかける」というのも良いかもしれません。
でも、「憧れ」の存在を自分の中に作るのは、子供の感受性によって異なりますし、憧れが生まれてこないと、心に響くような見学はできないのも実態です。
 
そこで…
自分のプレーがチームの中で比較的が高いレベルでも、まだそれほど高くなくても、一番大切なのは、実は、「練習中も試合中も、ずっと声を出し続けてチームを盛り上げる」ということだったりします。
 
まだ、バスケのプレーも意識も低い経験の浅い子や、低学年でも、コートの中を見続けていないと「声を出し続ける」ことはできません。
まずは、「ナイスシュート!」「ナイスパス!」「ナイスディフェンス!」を出し続けるだけでも、充分勉強できたりします。
(それは、チーム(特に先輩)が、そうした声を出し続ける文化ができていないと「なぜナイスパスなのか」「なぜナイスディフェンスなのか」の理解は、なかなか低学年に伝わりませんが…)
 
一方、そこそこレベルの高い子ではどうでしょう?
「ずっと声を出し続ける」…?…なんや、当たり前のことやん…。
 
いや…レベルの高い子は、チームメイトへの声の出し方は、変わらないといけない時期がきます。
具体的・建設的な声掛けにならず「リバウンド獲らないと!」「しっかりキャッチ!」という「行為後の指摘」ばかりしてしまう子が時々います。
もちろん、これは100%悪いわけではありません。
ミスしないようにお互い気をつけようという鼓舞という部分では、意味があります。
しかし…向上心ある子ならば、そういう「指摘だけで終わる」のでは、本人の進歩が少なくなりがちです。
 
大切なのは「自分がコート上のプレイヤーの視線・プレイヤーになったつもりで声出しをしているか」が大事になります。
 
45度のボールが降りた瞬間、「今、ポストアップ!」「逆サイドカッティング!」
自分がいるべきポジションの子がボールをミートした瞬間「まずシュートから!」
ボールがオフサイドポジションとなった場合の「3線ディフェンス!」
シュートが放たれようとする瞬間の「ボックスアウト!」
シュートを決めた瞬間の「切り替え!」
 
こういう声掛けは、まさに「自分がプレイヤーなら、自分に言い聞かせるようにそう動くはず!」「そう動くべき!」というイメージトレーニングになります。
つまり…「行為後の指摘」ではなく「判断の瞬間」を声にすることで、味方への鼓舞となり、同時に自分への言い聞かせになるのです。
少し話が脱線しますが、まだ免許取得前に、兄の運転する車の助手席で、自分が運転者になった気分で右折左折などの状況判断をしてイメトレしていたら、自分が教習所に通い始めた時「あなた、もしかして運転経験あるの?」と言われましたが、やはり、イメトレは凄く大事だと思います。
 
要は、練習中でも試合中でも、自分がコート上に立って戦っている「つもり」、自己暗示をしながら見学していると、自然と「集中」している自分がいることに気が付きます。
すると…ケガ復帰し、体力回復後にチーム合流したとき、ケガ前よりも、それほど「試合勘」が落ちていない可能性が高まります。
 
 
このように…意識の「持ち方」や見学の「方法」を具体的に考えることで、ケガ中の過し方やモチベーションは変わってくるようです。
 
とは言っても…上記のことは、いつもながら、娘と暗中模索のなかで見い出したものです。
「自分へのテーマ」も「見学方法」も、あくまでも一つの「例」に過ぎません。
100%正しいかどうか、ご指導方針やチーム事情、ご家庭のお考えによって、これ以外にも優れた「ケガ中の心構えと具体策」はあると思います。
また、足の大ケガの場合も、また違うやり方は見い出せるでしょう…。
 
ただ…ミニバスケでは、「ケガしてるんやから、集中して見ていなさい。」と一言放たれるだけの子、そのようなチームが少なくないようなので…老婆心ながら、娘の大ケガの時の経験談を述べさせていただきました。
 
 
『 ケガの功名 』
 
…それは、ツライ現実をしっかり受け止め、それを乗り越えるための工夫だったり、具体策だったりしますが…そうした中、一番大切なことは、当たり前のように過す健康体に対する感謝の気持ちを再認識することかもしれません。
 
大ケガを経験した娘は、ケガが治りかけた時、一番大切なことに気が付きます。
 
「練習に対するこの100を130に上げる意識とか、見学する時のコート上に立っているつもりの意識って…ケガをしてしまったから、その工夫としてやったことやけど…そもそもケガしていない時から、こういう意識を持って取り組んでおけば、日頃からもっと集中して練習できていたのかも…」
 
大事な事は、大事(大ケガ)が起きないと気付かなかったりします。
むしろ、日々の健康な体のありがたさと、その健康が当たり前という「慢心」であったことを反省してくれたことが、本人の財産に変わってきます。
 
僕ら家族は、そんなことを気付かせてくれるバスケが大好きです!

 

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