バスケ経験ある保護者さんへ

ミニバスケのカップ戦などの試合会場で、保護者の声がけの中に、時々残念な声がけを耳にします。その大半が、「明らかにバスケ経験者の親御さんなんやな~」と思える光景です。

 
経験者らしい微笑ましい励ましやリアクションは別にして…「それはちょっといただけないなあ」と違和感を覚える振る舞いの保護者について、団員さんがTwitterでつぶやきが続いたことがあったので、団長語録でまとめてみることにしました。
 
ただし、今から述べることは、地域特性やチーム事情がそれぞれ違うため、一概に当てはまることとは言えません。少なくとも最低限、きちんとしたご指導者がチームに存在していることを前提としての話です。
 
  
ミニバスケの試合は、特に公式戦ともなると、戦績が重要になります。
試合がたとえ練習試合でも、日頃の練習成果を試す機会でもあります。
 
でも、バスケ経験豊富な親御さんが応援席にいると、子供たちよりも、お父さんお母さんたちほうが勝ちたいと思っておられる熱の入れすぎの声が飛びます。
  

しかし…

   

子供は親のコピーではない

「なんでそんなパスすんねん!」
「そのシュート外したら勝てへんやろがぁ~!」
「そのリバウンド、獲れや!」
「なぜ走らんのや!」
「違う!そのパスは逆サイドやっ!」
 
我が子のプレーに口出しし過ぎる光景です。中には、今も現役でされている方もおられるんでしょうね。あなた(の現役時代)のプレーはいかほどかは存じませんが、子供は親のコピーではありません
そして、勝ちたい思いが過熱すると、我が子だけではなく、チームの子へも容赦なく厳しい声が飛ぶこともあるようです。
 
「パスは前に出せや!」
「そのパスが取れなくてどうする!」
「なんちゅうディフェンスしてんねん!しっかりやれやっ!」
「やる気あんのか!」
「そんなにおったら3秒やろ!アホか!」
 
・・・ここまでくると応援でもなく、叱責でもなく、もはや罵りです。
躍心JAPANでは、「チームは家族」という言葉をよく使います。家族のような結束力のあるチームは理想です。しかし、ここで語ることとは本質的に大きく違います。
 
どちらかというと、「自分で勝ちたいと考える子供」を育てたいのではない。子供が勝ちたいのではなく、あなたが勝ちたいのです。罵声を浴びせているのは、あなたの満足のための言動です。
  
「いや、違う!勝たせたいから励ましてるんや!」と反論される方もおられるでしょう。
 
それならば・・・お聞きしたい。
 
『あなたはチームの指導方針や、ミニバスケの精神をご存知ですか?それと・・・子供それぞれの個性や特性だけでなく、毎日の成長の変化をご指導者と同じように把握された上でのお声がけですか?』
 
残念ですが、試合中にだけ激しく子供達を罵るバスケ経験者に限って、保護者会への参加、指導者とのコミュニケーション、子供達との信頼関係が無かったりします。
 
・・・と、言うことは・・・
『あなたの罵声は、熱い応援ではなく、「指導者への侮辱」と「子供への過保護な姿勢」にしかなりません。』
  

家族のようなチームへ

ミニバスケでは、身体能力が大きく違ったり、性格的にも飲み込みの早い子遅い子がいます。

家庭環境により、バッシュも買ってもらえない子もいたりします。
でも、あなたが昔そうだったように、どんな子でも「バスケをやってみたい」とクラブの門を叩いたんです。

正しい指導者がおられたら、ファンダメンタルからじっくり教えられます。
正しい指導者なら、厳しくも温かい叱責はあっても、感情むき出しの怒号はないでしょう。
正しい指導者は、まずはバスケを続けたくなるような楽しい工夫もされるでしょう。
そうした工夫をされているとしたら・・・外野からの罵声一つで子供がトラウマになり、指導者の工夫努力を足元から崩してしまうことになりかねません。

では、どうしたら良いのか?
「僕も指導者に入る」という発想・・・これは、指導スタッフや保護者会から望まれている事でない限り、ぜひ遠慮しましょう。
ちょっとした片手間でできることではありませんし、そもそも望まれていないということは、信任されていないということです。
笑顔で、一歩下がりましょうよ。

一歩下がったら、応援には興味ない?
それはおかしいですね・・・勝たせたいから励ましてたのではないのですか?
励まし方を少し変えたら良いだけなんですよ。

どんな子でも、先週はできていなかったことが今週はできていることがあったりします。

それを見出して喝采の拍手を送るのが応援席に座る保護者の最大の役割なんです。

その瞬間こそが、「チームが家族のようになる瞬間」なんやと思います。

  • 普段全然走らない子が、速攻に絡んだ瞬間
  • 足の遅い子が、誰よりも早い切り替えでディフェンスに備えて速攻を阻んだ瞬間
  • とても気弱な子にボールミートの勇気が出た瞬間
  • 一度もリングを見ずにボール回しだけしていた子がシュートを狙った瞬間
  • 体は大きくても優しすぎる子がゴール下で遠慮せず前に攻めた瞬間
  • 自分勝手なプレーが多く、周りが見えていなかった子がナイスアシストをした瞬間
  • 大きな子に挟まれリバウンドに届かない小さな子が、大きな子の下から奪い狙った瞬間

これらのように・・・今までできなかった子が「やろうとした瞬間」こそ、ミニバス保護者会で認めてあげる瞬間やと思うんです。できて当たり前の経験者豊富な大人のバスケでは、そういう瞬間は少ないでしょう。
チームプレーがしっかり決まったり、満足に行くプレーや勝ち抜くことに悦びの中心になりがち。でも、小学生のバスケでは、成長・・・もしくは成長しようとしている瞬間こそが、一番の悦びです。周りの大人がそれを賞賛すると、素直な子供達に「あ・・・こんなことから始めたらエエんや!」という気づきを与えることにも繋がります。

 

経験者ならではの声援

 

逆に、経験者ならではの応援の声はアリだと思うんです。

「今の時間帯苦しいのはわかるよ!だからこそ頑張って走れ!」
「勝ちたいと焦るな!自分の力を信じろ!まずは力を出しきれ!」
シュートを外しても「良い攻めやったぞ!まずはディフェンスからや!気持ちも切り替えろ!」

娘のミニバス時代、途中から気づいた僕もこういう声がけに変わりました。
まあ、チームによっては、こういう声がけ自体も口出し禁止のチームもあります。
それは、指導スタッフのご意向に従うべきですね。


一方で、こうした中でも、我が子のプレーにイラ立つ親の気持ちは解ります。
ミニバスケを卒業した後もバスケをしている娘を持つ僕も、今もそうですし・・・、娘が気づいていなくても、バスケをかじっていた人間なら気づく点もあったりします。

でも、プレー内容を細かく責めても仕方がありません。
それよりも、モノを丁寧に扱う、振る舞いを丁寧にするなど、日頃の生活態度や意識を変えるために、今日から何をすべきかを冷静に話し合う程度に留めたいです。
それに、子供に悔しい気持ちがある時こそ、親が子離れしないと、子供の自主性が養われる機会を奪ってしまうことになりかねません。


そこに加え、ミニバスケの保護者会運営はチームによっていろいろでしょうが、本質的にはどこも「チームの子供たちの人間形成が第一」のはずなんです。
子供達を私物化する大人や、我が子さえ良ければイイとする「親が主役」の運営で良いはずがありません。
子供から勝ちたいと思わせる環境を心掛けるためにも、過剰な口出しは無用かと思います。
ちなみに、全国レベルになればなるほど、親は一切口出ししていないようです。
親が口出ししているチームはいつまでたっても弱いままです。
 

一歩下がるオトナの勇気


長々と綴りましたが、プレーに関しては親は一切口出しせずに、見ているだけに留めておくことが本質的な支えになるのでは?というのが要点です。

それを続けると、ミス連発やスランプが続く子供達は、親ではなく正しい指導者のところに「自分の何がいけないのか、アドバイスお願いします!」という勇気と、正しい判断力が育まれることもあったりします。

そう・・・悲しいかな私達の経験してきたバスケよりも、既にいろんな新しいスタイルや考え方のバスケがあったりします。
それはそうですよね。時代は大きく変わっていますから・・・。
プレーを教えるより、感謝の気持ちや仲間との絆を育むことを心がけることのほうが重要ではないでしょうか?
プレーが上手くても強くても、人の痛みが判らない心の弱い人間を育ててしまうほうが心配です。

だからこそ・・・

そろそろ一歩下がりましょうよ。
そろそろ子離れしてあげましょうよ。
そろそろ自主性を育む機会を増やしましょうよ。


我々親の最大の仕事は、「信じてあげること」ではないでしょうか?


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