【体験談:運動音痴な子の育み】

『小4の長男はこれまた酷い運動音痴でして、後から入ってきた4年生にどんどん追い抜かれていますが、一度も辞めたいと言わないので、できるだけサポートしてあげたいと思います』

 
これは、躍心JAPAN団員さんが、随分前にTwitterでつぶやいておられたコメントです。
躍心JAPANは、このお子さんのようなタイプは大好きです
 
足の速い子、凄いジャンプ力の子、ボールを持たせて日からセンスを感じる子…いわゆる身体能力が高い子には、どうしても大人も目を向けがち…。
しかし、見るからに運動音痴の子も、光る何かを見つけてあげる、何か一つを光らせてあげるということが、特にミニバスケの世界では必要だと思います。
そして、「一度も辞めたいと言わないので、できるだけサポートしてあげたい」の一言で、そのお子さんのバスケに対する実直さ・誠実さまでもが想像できますし、何とかしてあげたいというのは親心だけでなく、心豊かな大人であれば、誰もが共感できるところではないでしょうか?

 

そこで…団長の個人経験で恐縮ながら、「では、親として、そういうお子さんに、具体的にはどのようにサポートしてあげれば良いか」を述べてみます。
「頑張れ」と精神的支えも良いのですが、実は、それだけでは具体的な「導き」としては物足りないか、または「頑張れ」という言葉だけが子供に対するプレッシャーで終ってしまうリスクもあるようです。
(ここからはあくまでも体験談なので、決してマニュアルではありません。 )
  
娘は、誰もが認める運動音痴でした。ミニバスを卒業した後もバスケを続けている彼女は、今でも瞬発力や反射神経などの能力は…???という感じ。

赤ん坊まで遡るのは極端ですが、首が据わる時期、歩き始める時期は医者も一時は心配するほど遅く、幼児の頃は病気がち。
もちろん、保育園時代も、体を動かすことは大好きなのに、何をやらしてもダメ。

スイミングプールで泳ぐのだけは、徐々に上達していましたが、陸上での動きはぎこちなさピカ一(^^;)

  

保育園の運動会などは、「あれだけ大勢の観客の前で、他の子より異常に運動神経がないことを露呈するだけやん…」と、僕自身、正直憂鬱でした。

しかし、当の本人は、「いくら鈍くさい自分でも、みんなと一緒に参加できる運動会が楽しい」という笑顔に気付かされました。
子供本人のほうが「絶対的」に楽しみ、親のほうは「相対的」な感覚に陥っていました。
確かに、かけっこでは見事に最下位ですが、本人はめちゃくちゃ楽しそう!
順位にこだわっていたのは親だけで、本人の一番大切なものを摘んでしまうところでした。
 
そんな娘が始めたバスケ。
2年生6月に入団しますがいつまで経っても、「この子は、本当にバスケに向かないのでは?」と他の親御さんからの囁きが耳に入る始末…。
でも、そんなことを他所に、娘は毎日欠かさず「バスケ愉しいねん!」と練習参加。
  

 

そんな娘を見て、一つのアイディアが浮かびました。
業績悪化で傾きかけていた製薬会社のある役員が会社再建のために使った「危機的状況の時のモチベーションアップ」の手法です。

 

 

父「何か一つでも良いから、“チームで一番のこと”を見つけてごらん?」
娘「それは無理…何をやっても私は一番ダメやねん(苦笑)」
父「いや、何でも良いから“チームで一番のこと”を自分で無理やり作るんや」
娘「???」
 
例えば…
 
チームで一番…挨拶や返事の数が多い
 
そんなことから始めれば良いんです。
それ以外のことでも全然かまわない。
 
チームで一番…練習前の体育館掃除に気持ちを込める
チームで一番…空気が抜けているボールに気付き空気入れを要求する回数が多い
チームで一番…練習中の声が大きい
 
些細なことに思えるそんなことでも「チームで一番」は重要なんです。
そして、チームで一番であり続けることが最も大切。
子供に自信と自覚が生まれると、自分の身体能力で出来る範囲の頑張りが出来てきます。
 
チームで一番…ルーズボールに飛び込む
チームで一番…攻守の切り替えが早い
チームで一番…リバウンドに飛び込む(取れなくてもとにかく飛び込む)
 
この段階まで来ると、もはやコート上で味方への貢献ができています
 
ただ…こうしたことを言葉で書くと「なんでもない」ことのように見えますが、いざ子供にとってみては、こうしたことをやろうとして、しかも続けることは「とんでもない」努力です。
 
でも、「チームで一番」の自信の積み重ねは、もっと具体的になっていきます
 
チームで一番…ドリブルが低くて早い
チームで一番…ディフェンスの腰が低い
チームで一番…シュートが落ちる場所の予測ができる
チームで一番…ミートが上手い
 
一つ注意すべきは、「チームで一番」をいきなりこの段階を求めるのは、リスクが高いことです。
もっともっと最初に書いたようなレベルから徹底した方が、特に身体能力が低い子にとっては良い気がします。
 
娘は…いくつか「チームで一番」の積み重ねで、さらに本人の自信と、それに裏付けられたプレーができるようになりました。
その「チームで一番」の数が少しずつ増えると、「監督に叱られる数もチームで一番」になっていく時期を迎えます。
その辛さを打ち明けた娘に、親として一言だけサポートしたのは…「良かったなぁ…チームで一番期待される子になって…」…この一言で、その後は弱音を吐かなくなる。
 
残念ながら、ミニバスケでの最終学年では、全国大会出場の手前で敗退しました。
そうした中でも、最後は「チームで一番」どころか、「大阪市内で一番」のプレーが多く見られるようになったのも事実です。
 
下記のようことは公式記録が録られていないようですが、勝ち進む試合数の多さも含めて考えると…
大阪市で一番…オフェンスリバウンドの数は多い(気がする)
大阪市で一番…バスケットカウントの数は多い(気がする)
大阪市で一番…シュートブロックの数は多い(気がする)
 
全て「気がする」が付いていますが、それほど大げさな話ではなく頑張るようになりました。
ここで、ドリブルが一番上手い、シュート決定率が一番高い…などと言えない当たりは、娘らしい一面ではありますが…。
 
 
ちなみに、この「何でも良いからチームで一番になる」手法は、私の父が会社建て直しの使命を受けて身を削った、経営再建手法の一つでした。
最も若い女子事務職員までを含む全従業員に、「とても小さなことで構わないので、あなたが顧客満足のためにできる“この会社で一番”のものを見つけなさい」と号令をかけ、些細なことでも貢献し続ける人を、表彰し続けたというものです。
 
例えば…
「顧客への手書きお手紙の数NO.1賞」
「倉庫掃除積極参加NO.1賞」
「電話接客時の笑顔NO.1賞」
「部下の手柄を増やす上司NO.1賞」などなど…
これらの積み重ねで、ある部門の売上げは業界NO.1になるまで業績回復につながりました。
一つずつ、身近なところに各自の能動的な目標を持たせ、達成できた都度表彰して自信を持たせ、徐々に具体的な階段を自ら登らせるというもの。
これを、子供のバスケで、「自信を持たせる方法」として取り入れたものです。
 
 
結局… 子供達にとって、頑張りや楽しみは「絶対的」なもの。
その絶対的なものを、とても小さなことからでも「具体化」のヒントを差し伸べるのが、我々オトナ達の役割なのかもしれません。
 
また、先に述べたように、我が家の体験談・手法が絶対的なものではありません。
僕自身、バスケ指導者でもないし、バスケ知識も乏しい…。
だけど、企業経営でもバスケ指導でも、「人間を育てる」部分の本質が共通していることが多い。
もし、宜しければ、何かの参考にして頂けたら幸いです。
 
 
「頑張れ」だけではなく、「小さな積み重ね」をサポートして上げてください!


親がしてやれることは、本人が頑張ろうとする部分を背中から押してあげることくらいですから…
そして、自らが目標を持つ癖をつけるというのは、親が無理やり頑張らせるのとは、意味合いが少し違います。

自分で考えさせ、自らクリアさせ、自信を持って次へ進む。
その一歩目だけは「まずは、自分にできるチーム貢献で、チームナンバー1になってごらん…」この言葉は、案外効きますよ。
 
  
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